干ばつで干上がる田んぼ、ため池の役割と水の旅路、水田とため池への影響度


連日の猛暑で、田んぼが干上がり、ひび割れた大地を目にすることが増えました。 このような状況で、「ため池に給水車で水を注げばいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながらそれは現実的な解決策とは言えません。

なぜなら、給水車が運べる水の量は限られており、広大なたんぼを潤すため池を満たすにはあまりにも足りないからです。では、私たちはこの問題にどう向き合えばいいのでしょうか。


稲作最大の敵「水不足」はどれほど影響するのか

稲作において、水は単に田んぼを濡らすだけではありません。稲の生育サイクル全体に不可欠な役割を果たしています。

  • 生育初期(田植え直後): 稲の根がしっかりと張るのを助け、雑草の生育を抑えます。この時期に水がないと、稲の初期成育が阻害され、雑草が繁茂してしまいます。

  • 分けつ期(茎が増える時期): 稲が茎の数を増やし、栄養分を蓄えるために大量の水を必要とします。水不足は、茎の数を減らし、最終的な収穫量に直接影響します。

  • 出穂期・開花期(花が咲き、実がなる時期): 稲作で最も水が必要とされる時期です。この時期に水が不足すると、「穂ばらみ」や「花粉の不稔」が起こり、一粒もお米ができない、いわゆる「白穂(しらほ)」の原因となります。

専門家によると、出穂期から開花期にかけて、水が1日でも途絶えると、収穫量が20〜30%も減ると言われています。そして、これが数日間続けば、稲穂全体が実を結ばない、壊滅的な被害となります。

つまり、これ以上はもう無理というレベルの干ばつとは、稲作の最も重要な時期である出穂・開花期に水が全く供給されなくなることです。この状態になると、その年の収穫はほとんど見込めず、米農家にとっては死活問題となります。


ため池の多面的な役割

そもそも、ため池は単なる水の貯蔵庫ではありません。日本の農村地域に古くから存在するこの施設には、私たちの暮らしを守るための驚くべき役割が隠されています。

  • 農業用水の確保: これがため池の最も基本的な役割です。季節によって降水量が偏る日本において、水田稲作に必要な夏場の水を確保する重要な役割を担っています。

  • 洪水調節機能: 大雨が降った際、一時的に雨水を貯め込むことで、下流域への水の流出を抑え、洪水被害を軽減します。近年、局地的な豪雨が増加する中で、この機能はますます重要になっています。

  • 生態系の保全: ため池は、魚類、両生類、昆虫など、多様な生物の貴重な生息地です。地域の生物多様性を支える重要な役割を担っています。

  • 地域防災と景観: 火災時の消火用水、災害時の生活雑用水、そして地域の憩いの場や美しい景観を形成する文化的価値も持っています。


干上がったため池が復活しにくい理由

ため池は、一度干上がってしまうと、復活にはかなりの時間を要します。

  • 水確保の難しさ: 干ばつが続いている状況では、満水になるほどの雨は期待できません。

  • 底泥の乾燥: 底の泥が一度乾くと、水を吸収しにくくなるため、再び水を貯め始めるのに時間がかかります。

  • 生態系の回復: 生息していた生物が死んでしまい、元の生態系に戻るには長い年月がかかります。

  • 水質の悪化: 底泥の有機物が酸化し、再び水が貯まると水質が悪化する原因にもなります。

これらの理由から、ため池の水は日頃から大切に管理していく必要があります。


水はどこから田んぼへ?田んぼに水が流れる仕組み

田んぼに水が流れる仕組みは、先人たちの知恵と工夫が詰まった精巧なシステムです。

  1. 水源: 水は、河川ため池地下水などから始まります。

  2. 取水施設: 堰(せき)や頭首工(とうしゅこう)といった施設で、水源から水が取り込まれます。

  3. 用水路: 取り込まれた水は、幹線水路から支線水路へと運ばれます。

  4. 分水施設: 各田んぼに均等に水を配分するため、水量を調整する分水工が設けられています。

  5. 田んぼへの入水と排水: 最終的に、田んぼの水口(みずくち)から水が入り、対角線上にある水尻(みずじり)から排水路へ流れていきます。

この一連の仕組みは、地域や地形によって異なりますが、計画的に水を供給し、利用するための重要なインフラです。

異常気象がもはや当たり前になりつつある今、ため池が持つ多面的な役割と、田んぼに水が届くまでの仕組みを改めて知ることは、食と水を守るために非常に大切なことではないでしょうか。

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